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夏目友人帳英語版「Natsume's Book of Friends」レポート

「夏目友人帳」フランス語版に続いて、英語版の第1巻を入手しました。

タイトルは直訳に近い、「Natsume's Book of Friends」。各国で販売されているようです。今回はAmazon.co.jpで洋書として購入。本体は9.99アメリカドル。日本での値段を考えると少し割高な印象です。私がこれを買ったとき(2011年1月)には10%割引がされていて、税込みで777円でした。円高の影響なのかもしれません。

出版元の「Shojo Beat」は日本の少女漫画を出版している北米のレーベル。Shojo Beat公式サイトでは、販売されている漫画(もちろん、英訳されています)をブラウザ上で実際に読むことができます。立ち読みのようなものでしょう。このレーベルについては日本語版のウィキペディアに簡単な解説がありました。→Shojo Beat

外観

日本語版より大きいB6判


夏目友人帳1巻いろいろ

英語版は、日本の単行本サイズ(新書判)よりも一般的な、B6判で作られているようです。慣れたサイズより一回り大きく、持つとちょっとだけ違和感がありますが、文字が大きくなるので読みやすい印象。フランス語版は日本語版と同じ、新書判でした。

写真は、左から順にフランス語版、日本語版、英語版。

白泉社サイト内のコミックスサイズ解説ページ

カバーなし

フランス語版にはカバーがありましたが、英語版はなし。本の形態はペーパーバックです。手触りがよく、装丁もオリジナルの雰囲気があって素敵なのでカバーがないことは気になりません。ですがペーパーバックなので、読んでいるうちに表紙が反ってきたりして、長く読むには少し不安な印象。

右から左に読む

フランス語版と同様に、日本版と同じ「右から読む」スタイルです。左右反転させて英語と同じ方向で読むのはオールドスタイルなのでしょうか?背表紙には「This book reads from right to left.」というマークがついています。

手書き文字の修正

手書き文字の修正は差があります。

フランス語版の時は、ほぼ全ての文字に対して翻訳語との置き換えがありましたが、英語版では、割と日本語が残っている印象です。

セリフ・擬音語が全て修正されているのは同じですが、「友人帳」の表紙、ススギの「参」の字などは、日本語のまま残っています。中級妖怪の書いた「呪」の字も同様。

一方、「七辻まんじゅう」ののぼりや、夏目の体操服にあるゼッケンは修正されています。

英語版での呼び名、固有名詞

フランス語版では固有名詞くらいしか判別できませんでしたが、今回は英語。少しは内容が分かります。

各キャラの主な呼び名は、日本語版と近く、かなり分かりやすくなっていました。例えば:

翻訳のしようがないのか、「ニャンコ先生」はそのまま。名前に付ける「君/さん/ちゃん」「〜先生」といった日本の呼び名は、海外漫画ファン・アニメファンには割とよく知られているようなので、あえてそのままなのかもしれません。

「キュウ太郎(仮)」

さて第2話「露神(The Dew God)」に登場した、ススギこと「キュウ太郎(仮)/キュウちゃん」。「オバケのQ太郎」からの命名ですが、Q太郎の存在を知らない人にはきっと意味が分からないあだ名です。フランス語版の時は、そのまま「Q-Taro」と表記され、巻末の語録で「Q-Taro」について解説する、というやり方になっていました。

英語版ではどのように翻訳されているのかと見てみますと……

Natsume's Book of Friends Vol.1 episode 2:
"So...Which swamp does this Manatee live in?"
"He's not a water goblin. He lives in the mountains by San-no-zuka."

マナティーになっていました。確かに、似ています。確かに、水辺に居そうです。水妖怪ではないですが。以降の場面でもキュウ太郎(ススギ)は「Manatee」と呼ばれていました。

二葉(蓋場)村

他、例えば第4話、二葉村の説明の箇所はどうなっているか見てみます。

『夏目友人帳 1巻』第4話: 「はい。二葉村はもともと蓋場といいまして」「闇の境界があやふやな所でして、四年に一度妖怪が集まって祭りをしておりました」「水没して以来出来なかったのですが、干上がっているうちに一度やっておくかということになりまして」 Natsume's Book of Friends Vol.1 episode 4: The border with the world of darkness isn't as sharply defined there. We used to gather and have a party everyh four years, until it flooded. So we decided to hold one now while we can.

「二葉・蓋場」の名前に関する説明は省かれ、「二葉村がどのような場所か」の説明で埋まっています。フランス語版の時は、名前の別の意味についてのセリフがあり、巻末の語句解説にも恐らくは「蓋場」の解説と思われるものがありました。それに比べると、英語版では情報が少なくなっていますが、巻末を参照しなくてもすぐに話が分かり、ひっかからずに続きが読めるようになっています。

どうやらこの英語版は、予備知識の少ない読者にも受け入れやすい、というのを目指して工夫しているようです。

ちなみに、「お祭り騒ぎでフィーバーフィーバーなのですよ」は「It's a whole night of carousing and frolicking.」でした。

もちろん後書きも翻訳

 

1/4柱と共に、後書きもしっかり翻訳されています。

英語なので、フランス語よりは意味がとれます。3話のタイトル「夏目、人間退治」は「Natsume VS. Human」に。ちょっと意訳な感じが分かるのも面白いですね。

脚注はなし、巻末解説はあり

フランス語版にはかなり丁寧についていた脚注ですが、英語版にはついていません。巻末解説ページ(NOTE)はついており、全1ページでコンパクトにまとまっています。フランス語版よりは短いですが、充分に親切でしょう。

巻末解説では、「Yokai」「Shrine」などの用語に加え、「Page 181, Panel 7 : Symbol on the mask(※夏目のお面「目」の文字解説)」等、作中に登場する漢字など14項目に、それぞれに数行の短い解説が加えられています。

フランス語版でもそうでしたが、漢字を使ったモチーフや、命名での意味付けに関する解説が熱心です。漢字文化圏にない人たちからは、「漢字」がとても興味深い・あるいは勉強を要するもの、だということを改めて認識します。

ススギの「参」

Manateeことススギの登場する第2話は、この1巻の中で特に翻訳が難しいように思います。ススギの「参」の文字は、前述の巻末解説で説明されているのですが、その解説はこんな感じです。

Natsume's Book of Friends Vol.1 :
Page 71, Panel 2 : He looked like this.
The kanji on the yokai's chest can be read as an archaic form of "three" and might refer to the area where it lives, San-no-zuka(三ノ塚). "San" uses the modern kanji for "three".

正確ではありませんが、ざっと意味をとるならば「服に書いてある『参』の字は『三』の古めかしい形で、彼の住んでいる『三ノ塚』の『三』に言及しているのかも」という感じでしょうか。(※内容に誤解がありましたら、教えてください)

なるほど確かに、と思う一方、ススギの印象的な「まいりました」のセリフを忘れていない読者としては、そっちの「参」も解説して欲しかったな、という気もします。

英語版では「まいりました」は「I'm here」と翻訳されていましたから、「参りました」のニュアンスを説明するのは難しいのでしょうか。とりあえず、「I'm here」と近寄ってくる妖がいたとしたら、都市伝説級に怖いです。

マンガの読み方指南ページつき!


拡大

本編、後書きのあと、解説ページが1ページ、奥付が2ページ、さらに漫画の広告ページが7ページ付け加えられています。

そして最終ページには、コマを読む順番が解説されたページが。日本の漫画では見たことのないものなので、海外で売られているものなんだな、と実感します。

あまりマンガを読んだことのない人には難しいと聞くので、ありがたいですね。 マンガをあまり読んだことがなく、マンガはどの順番で読めば分からないから難しい、と言っている日本人の友人がいます。一度慣れてしまえば全く意識することはありませんが、読むにも技術が必要なんですね。 忘れがちですが、基本中の基本が抑えられているのは嬉しいところ。

装丁の仕掛け

さて、折角の機会なので続刊も少しずつ買い集めてみました。いざ集めてみると、装丁に仕掛けがあることを発見。

この英語版は、日本語版と違った装丁が可愛らしいのですが、表紙のタイトル下にいるこの妖たちの影(左図)、見てみると裏表紙の右下部分にこっそりいました。

表紙 裏表紙

それも、1巻、2巻、3巻と見ていくと、だんだん増えていく仕掛けです。(左から1巻、2巻、3巻)

  

この妖たちは背表紙にも登場。こちらは一匹ずつ、行列風です。

並べるのが楽しくなる仕掛けです。こういう遊びは、花とゆめコミックスではやっていませんが、取り入れてもいいような気もします。小さいところですが続きも揃えたくなるいい仕掛けで、満足度は高いです。(6巻以降はどうなっているんでしょう?)

英語で書かれているとはいえ、日本語版を読み慣れているファンにとっては、ほとんど「思い出しつつ」読める内容です。一般的な英語書籍に比べればかなり敷居は低いと思います。英語の勉強と思って手にとってみるのも楽しいと思います。

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