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夏目友人帳フランス語版「YOKAI」レポート

友人が、フランス語版の「夏目友人帳」1巻をプレゼントしてくれました。

日本の漫画は外国でも人気があり、最近ではほとんどリアルタイムに日本の漫画が翻訳・出版されています。中でもフランスは親日国でもあり、アニメや漫画の人気は高いそうです。コスプレイベントが賑わっていることでも有名ですね。

……ということを知識としては知っていても、外国でどのように漫画が読まれているのかを知る機会は、多くありません。日本に住んでいるなら日本語版を読めばいいので、当たり前ですね。私自身、フランス語は全く読めないのですが、せっかく手元にフランス語版がありますので、この1冊をレポートしてみたいと思います。

「フランス土産はぜひ漫画で」という我が儘を聞いてくれた友人に、この場を借りて感謝を!

タイトル

フランス語版のタイトルは「Le pacte des Yôkai」。Amazon.fr で「Yuki Midorikawa」と検索すると、夏目友人帳が数冊ヒットします。「Natsume's Book of Friends」というタイトルのこともあるようです。英語ですが、こちらのほうが直訳っぽいですね。(出版社が違うのでしょうか?)

タイトルが「妖怪」だと思うと、ちょっと驚きますが、向こうの人にとってはむしろ通りがいいようです。フランス語版Wikipediaで「Yokai」を検索してみると、「Yokai」「Yokai-Yashiki」「The Great Yokai War」に始まり、宮崎駿や犬夜叉などなど、日本文化に馴染みのあるものが多数見つかります。日本のWikipediaでも外国の神話や妖精、人物などの詳細な記事を目にすることがありますし、英語や外来語をタイトルにする例も多いですね。フランスでも同じようにYokaiが浸透しているのかもしれません。

カバー装丁

表紙のイラストは日本語版と同じですが、デザインが異なります。花とゆめCOMICSでは全ての漫画が「太いゴシックのタイトルの下に四角い枠の中にある」というデザインで統一されていますが、全体的にイラストが主役のデザインになっています。日本語版では見切れている、夏目の左膝も入っていますね。背表紙に表紙のイラストが入っているのも、花とゆめCOMICSにはない装丁です。

イラストは、日本版より少しコントラストが高くなっているように見えます。

裏面には値札が貼られています。(せっかくなので、剥がしていません。)5.95ユーロ、今だと800円くらいですね。

カバー折り返し部分のイラストも、日本語版と同じです。日本語版では作品解説が載っている裏側の折り返し部分には、他のコミックスの宣伝が入っています。

掲載されているのは、「FRUITS BASKET / NATSUKI TAKAYA (フルーツバスケット/高屋奈月)」、「GLOBAL GARDEN / SAKI HIWATARI (GLOBAL GARDEN/日渡早紀)」、「LAST QUATER / AI YAZAWA (下弦の月/矢沢あい)」など。残念ながら緑川さんの他作品は売られていないようですが、出版社もばらばらな人気タイトルを眺めているだけでも、なかなか楽しいです。

漫画部分

フランス語版は右開き!

右開きの様子

手に取って一番驚いたことですが、このフランス語版は右開きです。日本語版と同じ方向から読みます。

10年以上前に何度か、外国語版の日本漫画を手に入れたことがあるのですが、その時は全ての漫画が左開きになっていました。文字を横書き(左から右に書く)言語では、普通の書籍は左開きなので、漫画全体を左右反転させて、左開きにするのですね。

最近でも、ドイツ語版や英語版で、やはり左開き(左右反転)だと聞いていたので、欧米言語文化圏ではみな左開きなのだろうと思っていました。でも私がぼんやりしていただけで、翻訳本の常識にも色々あったようです。(確かに、韓国語版などは右開きです)

左右逆だと、文字は読みやすくなりますが、着物の袷が逆になったり右利きのキャラクターが左利きになったり、指輪の位置が逆になったりと違和感もあります。右開きのままだというのは、ちょっと嬉しいですね。

書き文字も翻訳

写植も翻訳してあります

次に驚いたことですが、画面に日本語がほとんど残っていません。セリフどころか書き文字まで丁寧に翻訳・書き換えなされています。

中級妖怪たちの落書きした「呪」の字も「MALEDICTION (=呪い)」に修正されています。「きゃっきゃっ」は「HI HI HI」に。漫画に多い擬音語・擬態語は、翻訳が難しいとよく聞きますが、どうにかして翻訳してしまっているようです。

写植も翻訳してあります

例えば、キュウ太郎の「参」の文字も翻訳されています。登場する全箇所で修正されているのでちょっと感動しました。怪しさが伝わらないような伝わるような。

「友人帳」は「CARNET(=ノート)」ですが、「キュウ太郎」は「Q-TARO」になっています。「七辻まんじゅう」なら「NANATSUJI-MANJU」。こういう固有名詞はそのままのようです。

柱コメント、あとがきも翻訳

 

更には、柱コメント、あとがきも翻訳されています。「あかく咲く声」のような固有名詞は「AKAKU SAKU KOE」と書いておいて脚注で説明、というスタイルのようです。かなり丁寧だと思います。

フランス語の部分は「BONJOUR!」しか分かりませんが、緑川さんのコメントが外国の読者にも届いていると思うと、何だか嬉しいです。

あとがきにはちゃんと「ファンレターの宛先」も載っていました。(フランス国内っぽい住所でした。)フランスの編集部を経由して、緑川さんに届くのでしょう。

注釈と解説

上でも何度か書きましたが、フランス人に馴染みのなさそうな語彙や作中背景についての解説が、かなり丁寧についています。

脚注

まずは、同じページ内につけるパターン。最も簡単なタイプだと思います。日本語の漫画でも、たまについているのを見掛けることがありますね。

「Yokai」、「Manju」、「Yukata」などに、このタイプの注釈がついていました。

語彙集

より詳しい語彙集が、「あとがき」の後に付属しています。この「Le pacte des Yôkai」1巻では、 「Shimmenawa(しめ縄)」「Maneki-neko(招き猫)」に始まり、「Seku-hara(セクハラ)」「Tarusaru(垂申)」など14のキーワードが6ページに渡って解説してあります。

(画像は右があとがきの最終ページ、左から語彙集)

日本の伝統的名詞以外にも、妖怪名といった固有名詞の説明が割と多いです。どうやら漢字の意味から名前の雰囲気を説明しているようですが、詳しくは謎。ちゃんと「Q-Taro」の説明もあります。

巻末解説

更に、語彙集のあとに解説用のページがついています。全部で13ページ。全く読めませんが、友人によれば、この作品の世界観や背景などが解説されているそうです。

向こうで売られている漫画にはみなこういった語彙集・解説がついているそうで、翻訳ものの難しさを補うために色々な工夫がされていると言えそうです。(むしろ本家日本語版より親切です)

この解説の後に、更に漫画の広告ページが8ページついています。合計すると、日本語版より27ページ多いわけで、結構なボリュームです。

奥付

奥付は日本のものよりシンプルな感じです。ここには日本語版の情報と、フランス語版の情報が併記されています。

日本語版のタイトル(Natsume Yujincho)や出版年(2005年)、出版社(白泉社)がハッキリ分かるので、これを見れば熱心なファンなら日本語版の元の作品にたどり着くことも可能ですね。

これによると、このフランス語版は2008年に出版されたようなので、恐らく夏目のアニメ化を受けての翻訳出版だったのでしょう。今のところ夏目友人帳5巻までが出版されているようなので、もうすぐ日本語版にも追いつく形ですね。

まとめ

全体として、日本語版とほんとんど同じものを、フランス語で読める!といって過言ではないような丁寧な翻訳本でした。全ての効果音が書き直されている、というのが地味にすごいです。印刷は、日本のものの方が若干くっきりしているような感じがしますが、なかなか快適に読めます。

NATSUME、REIKOなどの固有人名がそのままなので、フランス語が分からなくても何となく分かってしまうのも楽しいです。ニャンコ先生は「Maître Griffou」になっていますが、こちらは意訳でしょう。(英語版ではNyanko-sensei / master catと紹介されていました)

何だか分からないけど、フランス語を勉強したくなる。そんなLe pacte des Yôkaiでした。海外に行かれた際には、ぜひ緑川作品を探してみてください。ちょっと楽しいです。

(初出:2009年6月26日)

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