アツイヒビシリーズ「寒い日も。」幻の続編

※この文章では、短編集『アツイヒビ』『蛍火の杜へ』収録の短編およびいくつかの短編を、あわせて「アツイヒビシリーズ」と扱っています。詳しくは「アツイヒビシリーズはどこまで?」をご覧ください。

短編集『蛍火の杜へ』には、収録短編「ひび、深く」にこんなコメントがつけられています。

『蛍火の杜へ』1/4柱コメント05 より:*「ひび、深く」
実は違う内容で描くつもりで予告カットを描いたのですがどうしてもうまく表現できず、どたんばで別の作品を描かせて頂いてできた話です。(下線部引用者)

さてこの当初描くつもりだったという「違う内容」、気になっている方もいらっしゃるのでは。

「ひび、深く」の予告(カット&あらすじ)は、こんな風でした。

2002年12月号LaLa (2003年1月号LaLa予告)より: 緑川ゆき/ひび、深く
2003年1月号LaLa予告カットイラストA  2003年1月号LaLa予告カットイラストB
あらすじA:遠山が想いを寄せる池田先輩には好きな人が…!?
あらすじB:遠山の憧れ・池田先輩には好きな人がいて!?

※予告は数パターンあって、イラストカットが使い回しでも文章は違うことがあります

予告のカットイラストは池田。『アツイヒビ』収録「寒い日も。」の続編の予定だったようです。そう考えると、「ひび、深く」というタイトルもまた違ったイメージが膨らんできますね。

「ひび、深く」が掲載された2003年1月号LaLaでも、緑川さんは「予告と内容が違っていてすみません」といったコメントをしています。実際には遠山・池田の話ではなく、新キャラ・陣内兄妹の物語になりました。センシティブな恋愛モノ、という部分は踏襲しています。

もし「ひび、深く」が「寒い日も。」の続編として描かれていた場合、『アツイヒビ』『蛍火の杜へ』の二つの短編集は、同じシリーズ、という印象がかなり強いものになっていたと思います。

「寒い日も。」から「ひび、深く」まで1年2ヶ月、間には「緋色の椅子」連載と短編2編を挟んでいました。また、「ひび、深く」以降、緑川さんは「緋色の椅子」連載の傍ら「花唄流るる」など短編5編を執筆しましたが、「寒い日も。」の続編は描かれませんでした。現在は「夏目友人帳」連載中で、短編が描かれる気配もありません。

「ひび、深く」の予告はあまり知られていないようでしたので、まとめてみました。ファンとしては、続編があるなら読みたい!という気持ちにさせられますね。いつか緑川さんの中で「今こそ続編!(あるいは完結編?)」というような流れが来て、再び池田や遠山の名前を見ることができる日をのんびり待っています。

(この記事の初出:2010年9月8日)